わが国はこれまで世界のまぐろ関連産業・市場をリードする立場にあり、漁船漁業や1990年代から急速に拡大したクロマグロ・ミナミマグロ養殖においても、その技術開発におおいに貢献してきた。現在、まぐろ関連産業の活性化・持続発展に向けて、産官学の一層の研究開発・技術開発がのぞまれるところであり、大学・民間からも着々と成果があがっている。水産総合研究センターでも、平成19年2月1日、バーチャルな研究組織としてのまぐろ研究所を立ち上げ、まぐろに関連した研究開発を積極的に推進しているところである。
本セミナーでは、まぐろ関連技術開発に携わる各機関により、“まぐろ“主要5種の生物情報・生産・利用についての概要から、今後のまぐろ供給に影響する国際規制の動向や、クロマグロを中心とした養殖・種苗生産の最新情報までを紹介する。
セッションT
1.【10:30-11:00】まぐろ類資源と漁業 −生物学的知見と生産・利用の概要−
(講演者:水産総合研究センター遠洋水産研究所温帯性まぐろ研究室長 伊藤智幸)
8種類いるマグロ属魚類(クロマグロ、大西洋クロマグロ、ミナミマグロ、メバチ、キハダ、ビンナガ、タイセイヨウマグロ、コシナガ)は、どれも似ていながら、形態、分布、生理などが様々に異なります。これらの違いをお話します。
2.【11:00-11:30】まぐろ類の資源状態と国際規制
−今後の天然資源・養殖種苗供給に影響する諸問題−
(水産総合研究センター業務企画部研究開発コーディネーター 小倉未基)
まぐろ類の資源管理は地域漁業管理機関で行われ、科学委員会で資源状態が検討される。
世界のまぐろ類は資源学的には既に充分に利用している状況もしくは厳しい資源状態に陥っているものも見られる。
ここでは、いくつかの種・系群について漁獲動向・資源状態について紹介し、資源状態の維持・改善に向けた管理措置や、まぐろ漁業をとりまくその他の課題について紹介する。
3.【11:30-12:00】天然クロマグロとはどのような生き物なのか
−生態に関するトピッ クス−
(水産総合研究センター西海区水産研究所石垣支所任期付研究員 鈴木伸明)
まぐろ類資源に関する注目の高まりとともに,クロマグロ養殖が急速な発展,拡大を見せている。
しかし,天然のクロマグロに関する生物学的知見は意外なほど少ない。
本講演では,近年明らかになってきたクロマグロの分布・回遊や成長といった基礎的・生態的知見を整理しつつ,遺伝子解析技術を用いた最新の研究成果や,200kgを超す成熟魚が水揚げされる石垣島での調査の様子などをご紹介したい。
4.【13:00-13:30】天然マグロのトレーサビリティシステムの導入に向けて
(水産総合研究センター開発調査センター浮魚類開発調査
グループリーダー伏島一平)
食の安全・安心への関心が高まっている中,開発調査センターでは,調査船開発丸が漁獲したメバチマグロを,漁獲時から水揚げ,加工・流通の各段階を追跡できるトレーサビリティシステムを用いて量販店で販売するとともに,消費者に対してアンケート調査を行い,当該システムの課題や消費者の評価などを整理しました。
また,まぐろの科学分析値とまぐろ専門取引業者の品質判断基準とのあいだに,一定の関係があることなども紹介します。
セッションU
(講演題と講演者)
5.【13:30-14:00】クロマグロの養殖技術開発の経緯と現状
近畿大学は,1970年 7 月から水産庁遠洋水産研究所の「マグロ類養殖技術開発試験」に招聘されて以来,天然ヨコワ飼い付け,親魚養成および種苗生産技術の開発を続けてきた。当初3年間,ヨコワを1年以上飼育することが出来なかったが,採捕・活け込み方法や生簀の構造改良等の試行錯誤の末に親魚養成に成功した。1979年には初の自然産卵・仔稚魚飼育に成功したものの,養殖用実用種苗の生産には至らず,完全養殖を達成したのは研究開始から実に32年後の2002年であった。
(講演者:近畿大学水産研究所 宮下盛 教授)
1968年 4 月 近畿大学水産研究所 白浜実験場勤務
1970年 7 月 水産庁遠洋水産研究所統括の「マグロ類養殖技術開発試験」に
参加
1973年 4 月 近畿大学水産養殖種苗センター白浜事業場兼任
1985年 4 月 近畿大学水産研究所 講師
1993年 4 月 近畿大学水産研究所 助教授
2001年 4 月 「クロマグロの種苗生産に関する研究」で博士学位取得
近畿大学水産研究所 教授
2002年 4 月 近畿大学水産研究所 奄美実験場 場長
2007年 4 月 近畿大学農学部・農学研究科 教授(近畿大学水産研究所 教授
兼任)
2004 〜 8年 近畿大学21世紀 COEプログラム研究拠点流通・経済グループによる
国内およびオーストラリア,メキシコ,スペイン,クロアチア等海外
のクロマグロ養殖実態調査に参加。
2008年 4 月 近畿大学水産養殖種苗センター長(兼任)
6.【14:00-14:30】国内クロマグロ養殖事情:養殖事業展開の歴史、現状
近年、世界中のマグロ類の資源問題が注目され、特に刺身向けとして重要なクロマグロは漁獲規制強化による大幅な供給量減少が予想されることから、養殖対象魚としての注目が急速に高まっている。国内におけるクロマグロ養殖事業の歴史と現状を紹介し、持続的発展の為に解決すべき課題を整理して、マルハニチログループの取り組みを紹介する。
(講演者:(株)マルハニチロ水産 増養殖事業部長 草野 孝)
1972年 3月 長崎大学水産学部 卒業
1972年 4月 大洋漁業(株)入社
1987年12月 同社 生産事業本部 定置養殖課課長
1993年 大洋漁業(株)からマルハ(株)に社名
変更。
1999年 4月 マルハ(株) 増養殖事業部部長
2008年 4月 (株)ニチロとの事業再編によりマルハ株式
会社から(株)マルハニチロ水産に社名変更。
(株)マルハニチロ水産 執行役員 増養殖事業部長
7.【14:30-15:00】マグロ養殖用配合飼料の開発
養殖魚の生産において「飼料」は非常に大きい役割を担っています。特に安定した栄養成分と品質の配合飼料は日本養殖業の持続的発展に必要不可欠なものと言っても過言ではありません。
マグロ用配合飼料は20年以上前から様々な形態と成分でトライアンドエラーが行われていましたが、養殖場で使用可能な製品の完成には至っていませんでした。
本講演では、世界で初めて単独給餌でのクロマグロ養殖を可能にした新型配合飼料「ツナ・フード」の紹介を中心として、配合飼料がマグロ養殖へどのように貢献できるかについてお話しさせていただきます。
(講演者:林兼産業(株) 飼料事業部 技術開発課長 三代 健造)
1965年大分県生まれ。
1990年長崎大学水産学部修士課程卒業。
1991年林兼産業(株)に入社、飼料事業部研究課に配属され、養殖魚の栄養要求や代謝生理の研究や養殖用配合飼料の開発に従事。現在技術開発課課長。
主な開発成果:海産稚仔魚用顆粒飼料・マダイ用EP飼料・セミドライ常温流通EP飼料及び包装資材(特許申請中)・ソーセージ型配合飼料(特許取得)
8.【15:00-15:30】クロマグロ研究開発の展望
マグロ類の世界的な需要の拡大,資源量の減少,保護活動,燃油高騰による漁船漁業の危機,食の安全性等の多くの問題から,国民への安全・安定供給を図るための研究への期待は,より一層高まっている。水産総合研究センターでは、平成19年2月にマグロ研究所が発足し、これらの社会的なニーズに応えるべく、一元的な研究管理の下で研究開発を推進している。ここでは、昭和60年からのクロマグロの親養成、種苗生産について、研究開発の一端を紹介し、将来のクロマグロ養殖へどう貢 献していくかを展望してみる。
(講演者:宮津栽培漁業センター 場長 升間 主計)
1953年 島根県生まれ
1978年 広島大学水畜産学部水産学科卒
1985年〜(社)日本栽培漁業協会八重山事業場でクロマグロ,
キハダ,カンパチ類,南方性ハタ類,マチ類の親魚養成,
種苗生産技術開発に従事
1994年〜(社)日本栽培漁業協会奄美事業場長として、クロマグ
ロの親魚養成,産卵技術開発に従事
2003年〜(社)日本栽培漁業協会は独立行政法人水産総合研究センターへ統合
2005年〜現在 水産総合研究センター宮津栽培漁業センター場長 業務の総括,
アカアマダイの種苗生産技術,ヒラメの放流技術開発に従事
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